今回は小ネタです。
2016年元旦に初日を迎える宙組公演「Shakespeare (シェイクスピア)〜空に満つるは、尽きせぬ言の葉〜」公式サイトより。
※研究科一年のうち、中学校卒業後ただちに宝塚音楽学校に入学し2015年3月に宝塚歌劇団に入団した生徒については、法律の規制により新人公演の稽古時間が十分に取れないため、本公演の新人公演には出演いたしません。
年少者を規定した労働基準法によるもの
これはどういうことかというと、
①【前提】宝塚歌劇団に入団するための音楽学校に入学できるのは、中学卒業時から高校卒業時までの4学年の女子のみ。
②2015年3月入団の中学卒業後に音楽学校に入学した初舞台生は、
16歳+音楽学校2年=2015年度中は一律で18歳未満とみなされる。
③そのためそれ以上の学年の研1生(入団1年目の生徒)とは対応が違う。
④何が違うのかというと、労働基準法第60条第1項を意識していると思われます。
満18歳未満の年少者を、1日8時間、週40時間を超えて働かせることは労働基準法において原則として禁止されています。また、同じく満18歳未満の年少者を、午後10時から翌日の午前5時までの深夜に労働させることは禁止されています。
新人公演というのは、研7(入団7年目まで)の生徒たちにより本公演の合間に上演されるものです。
そのため 新人公演出演者は稽古期間である約1か月の間に、本公演と同時進行で新人公演の稽古をすることに必然的になります。
当然夜も遅くなりますし週40時間ではどうしても足りないでしょう。
⑤そのため労基的に18歳未満とみなされるこの学年の生徒は、他の生徒より稽古時間が足りない不平等な状態で舞台に出せない、という措置をとったと考えられます。
「でも、10時以降に帰っているよ?みたよ?」なんてそこまで執拗に突っ込む方はいないと思いたいものですが。
ちなみにこの文言が掲載されるようになったのは、ごく最近なので役所などからなんらかの指摘が歌劇団にあったか、もしくはいわれないために先手を打ったのか。
どちらにしても企業から社会的なアピールの意味も込めているのでしょう。
法律と実際の現場との違い
法律は、二転三転した派遣労働法などをみてもわかるように年々、時代情勢とともに変化していくものです。
40代以上の方なら覚えがある方もいらっしゃるかもしれませんが、1980年代女性アイドルが「ベストテン」や「夜のヒットスタジオ」などの夜の生放送番組に出演する際に、「法律上の都合で…」と断りを入れた上で事前に録画した歌の映像を流すなどしていました。
これは当時の女性は時間外労働、休日労働、深夜労働は(あくまで表面上)全面禁止していたため。
(1999年に改正され、女性は男性と同様にすべての時間で働けることになりました。)
しかし実際に社会人として働いている方は、労基なんて!とやさぐれたくなる場面に出くわすことしばしば。
労基法がザル法だというのは大人の哀しい暗黙の了解なのです…
まとめ
スターを「生徒」、演出家を「先生」と呼ぶならわしからつい忘れてしまいがちですが、ジェンヌさんたちは立派な社会人。阪急阪神HDの社員さん。
そして上級生になれば、契約を結んで舞台に立つようになります。
この先に歌劇団の対応が変化することも可能性としておおいにあるので、それも見守っていきたいと考えています。